2002年期受賞者の谷口静香さんのスピーチ(2010年サンフランシスコ於)
「受賞がもたらしてくれた変化」
私は、2002年度「女性に機会を与える賞」をいただきました谷口静香です。身に余る素晴らしい賞の受賞がもたらしてくれた大きな変化を、皆様への深い感謝とともにご報告させていただきます。
8年前、ベビーシッターとして働きながら、知識を深めるために大学で児童心理学を学びたいと考えていた時に、SI(国際ソロプチミスト)安芸の皆様に出会いました。当初、応募されている他の方々の事情を伺い、私は受賞を辞退しました。しかし、再度の受賞のご連絡を受け、「他の女性たちを代表していただいた」と受け止め、賞を頂戴することにいたしました。シッターの合間に、支援の必要な母親のために「キッズガーデン」というサロンを自宅で開き、その活動のためにも、賞金を使わせていただきました。現在では、大学も無事卒業し、目標であった認定心理士資格も得ました。
しかし、多くのことを乗り越えた今でも、過去のことを言葉にするには勇気が必要で、大きな痛みがあります。外見上は幸せに見えていた10年前、私は、夫や子どもとの関係ではないことで、日々深く傷つき、苦しんでいました。
あの日、自宅の7階のベランダの手すりから身を乗り出し、飛び立とうとした瞬間です。突然、友人との約束を思い出し、私は人生最後の約束を果たそうと彼女に電話しました。最近お子さんを亡くされたばかりだった彼女は、「もう、死にたい。私のこどもは、なぜ生まれたか教えて欲しい」と、訴えました。私は思わず「私も、あなたと一緒に意味を探すから。お願い、あなたも生きて」そう言って泣いていました。私は離婚を決め、子どもたちと故郷に帰りました。
日本の自殺者数は、近年3万人を超えています。心の傷は目に見えなくとも深刻で、愛する家族を失った悲しみも、言葉の暴力や存在を無視されたことによる傷も、その傷が自らの命を奪う方向に向かうと救うことは困難を極めます。今苦しみの中にある方への理解も支援もない状況があってはならないと、私は子育て支援を中心とする職場を作り、専門機関に相談しやすい環境を提供したいと思いました。
「女性に機会を与える賞」の受賞の話を聞き、サロンには面識がなくても多くの母親が相談に訪れてくれました。夫に暴力を振るわれ夜中に逃げてくる親子もありました。母親は自分を責めることが多く、命の限界にいながら解決しようという気力を奪われていました。この無力感を乗り越えさせることが支援の大きなハードルです。でも、母親に問題やリスクを気づかせることはできても、実際に逃げようとすると、子どもの学校、仕事、保険、家など、生活の安定への道筋が未整備なため、新たなリスクを抱えてしまうという現実がありました。
近くにシェルターがありませんでしたので、各機関や弁護士との橋渡しをし、母親が解決の道を歩く間、支援を続けました。母親の経済的自立を目指し、高知県と安芸市の協力で、働きながらスキルを身に付けることができる議事録反訳、テープ起こし業務の受注を始めました。反訳は、働き場所を選ばす、履歴書にも記載できます。
サロンでは、私が保育士として子供たちを見守ることで、母親が我が子と同じ空間で仕事のできる環境を整え、子供も学校帰りに立ち寄り、宿題をしながら母親を待って一緒に帰宅できる職場を実現しました。母親たちの得意分野は幅広く、家事介助、商品開発など数々のプロジェクトに取り組み、最近では報酬を得られるようになりました。また、この間、多くの母親が専門機関に相談に行き、自らの足で解決への道を歩みました。
ソロプチミストの皆様、家族、子どもたち、多くの友人、そして、受賞後、私の生きられる場所で生きることを応援してくれる元夫に力をもらい、私は今、夢を生きています。あの時、失われるはずだった私の命は今、困難や絶望の淵におられる方からの電話や訪問を受けています。心の痛みを受け取り、必ず乗り越えてくれると信じて、ご家族に寄り添いながら待つことが、私の新しい人生に与えられた本当の仕事のようです。素晴らしい機会を与えていただきましたことに心より感謝いたします。本当にありがとうございました。
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